2015/12/31

2015年映画マイベスト10

大晦日ということで、「2015年映画マイベスト10」を選出してみた。映画館で観たのと、レンタル映画で観たのが混ざっているので、古い映画も混在。「2015年に観た映画」ということで。

【2015年映画マイベスト10】
01位:パンズ・ラビリンス
02位:KANO
03位:くちびるに歌を
04位:ジュラシック・ワールド
05位:ベイマックス
06位:バケモノの子
07位:イミテーション・ゲーム
08位:ビリギャル
09位:ヴィヴィアン・マイヤーを探して
10位:第9地区


今年のベスト10は、「観る前はあまり期待していなかったが、いざ観てみると大感動!大満足!」という作品が多かった。

1位にあげた『パンズ・ラビリンス』は、2006年公開の映画で「スペイン内戦後の暗黒時代。少女が迷宮に入り守護神パンの試練を受ける」という内容だが、これぞ観ないと想像もつかない内容だった。ここから「ペイン内戦」について調べ、歴史の理解へとつながった。

パンズ・ラビリンス』を作ったギレルモ・デル・トロ監督の最新作『クリムゾン・ピーク』が2016年1月に公開されるようだ。再び『パンズ・ラビリンス』の独特の余韻ある感動を期待して、観にいかなくては。

2015/12/19

下町ロケット2

池井戸潤『下町ロケット2 ガゥデイ計画』を読んだ。中小企業の佃製作所が、ロケット用バルブに続き人口心臓用バルブの開発に挑む。佃製作所vsサヤマ製作所の戦い。医療機器分野の開発の問題。下請を見下す大企業の横暴。組織の論理で出世のため権力をふりかざす医師。満足度★★★★★。

今年はビジネス書ばかり読んでいたので、小説を読むのは久しぶりな気がする。前回の直木賞受賞作品『下町ロケット』は5年前の作品なので、「凄く面白かった」以外は、どんな内容か詳細を忘れてしまっていたが、今回の続編も、読み応えありーの、感動ありーの、でとても面白かった。「大組織の弊害(官僚主義)」として、大企業と医療業界の問題、そして今回も「中小企業のモノづくりの苦悩」がリアルに描かれる。エンジニアとして共感する場面も多く、読書後に仕事に対するモチベーションがアップした。電池は1日にしてならず。


【語録】

・開発には「ブラックボックス」がある。理詰めや数式で解決できる部分は実は易しい。あるところまで行くと、理屈では解きあかせないものが残る。そうなったら、「徹底的に試作品を積み上げる」しかない。作って試して、またつくる。失敗し続けるかもしれない。だけど、「独自ノウハウ」っていうのは、そうした努力からしか生まれないんだ。スマートにやろうと思うなよ。泥臭くやれ。頭のいい奴ってのは、手を汚さず、綺麗にやろうとするキライがあるが、それじゃだめだ。

・組織の中にいて「出世する」ことに目覚めてしまった。若い頃ならともかく、だんだんと出世して権力を持ち始めると、その魔力に取り憑かれてしまうのかもしれない。組織ってのは往々にしてそういうもの。出世が結果ではなく目的になってしまった人間は、本来、「何が大切であるか」がわからなくなってしまう。人の命より、目の前の出世を優先するようになる。そういう人を最も確実に目覚めさせるものがあるとすれば、それは「挫折」。組織で頑張っている連中ってのは、出世競争から外れると、魔法が解けたように我に返ることがある。「いったい俺は何をやっていたのだろう」「人生にとって、もっと大切なものがあるんじゃないか」ってね。

・技術でいくら勝とうと、これはビジネスだ。受注できなければ、その技術は生かせない。その意味で足りなかったのは「営業戦略」ではなかったか。なまじ特許がある故に、単独開発以外の発想が無かった。あまりに「正攻法過ぎた」のかもしれない。

・実際に作るとなると、図面のままではうまくいかない。素材に関する知識と、求められる動きに合わせた微調整が必要。そこから先は極めて専門性の高い職人技だ。行くとこまで行っちまうと、一般論だけでは品質は語れないんだよ。そこから先は「経験」なんだ。その蓄積が「ノウハウ」になる。バルブは1日にしてならずってな。

(池井戸潤『下町ロケット2 ガゥデイ計画』)

2015/12/05

梅原デザイン事務所

「田舎の魅力」を引き出すデザイナー。

今回のカンブリア宮殿のゲストは、凄腕デザイナーの梅原真さん。梅原デザイン事務所 は、「一次産業」にフォーカス、特化した高知のデザイン事務所で、社員数は2名。デザインで田舎の魅力を引き出す。しかも「商品プロジュース」まで手掛ける。うーむ、素晴らしい。デザインの力を使って、こういう仕事をしてみたい。キーワードは「高知、田舎、一次産業、デザイン、シンプル、オリジナル、足元の付加価値」。

梅原さんのビジネスストーリーを聞いて、次のように思った。左脳(数字、お金、論理的思考、近眼思考)ばかりで考えていると、都会との単純比較になり、短絡的に「田舎は何も無い、人口減少、課題山積み、ダメだ、絶望的」となる。しかし、右脳(デザイン、直観、全体俯瞰、遊び心)を使い、観察すると、「田舎の魅力」から「新たな付加価値(他にはないオリジナル な価値)」を見つけ、「新たなビジネス」に結び付けられるのではないか、と。梅原さんが「デザイン力」を用いて高知で実践しているように。

「左脳と右脳のバランス」を保って課題を解決。これぞ、新たな時代の「社会問題を解決する デザイナーの仕事」だ。


【梅原さん語録】

・「田舎の魅力」を引き出すデザイナー。デザインでローカルの問題を解決。地方にこそ豊かな宝アリ!

・デザインが商品よりオーバーして、語り過ぎたり、付加価値をつけ過ぎてはダメ。作り手の働いている風景が浮かぶ言葉を選んでいる。

・扱うのは「一次産業」中心の地方の仕事ばかり。「田舎のマイナス」は、考え方ひとつで「魅力」に変わる。

・みんな田舎はダメダメと言う。「やりようがない」「手の尽くしようがない」と言う。「自分の足元」を見ていったら、面白い事がある。社会とつなげば、新しい価値が生まれる。

・都会や大企業からの依頼は基本断る。

・ローカルが豊かでなければ、その国は豊かではない。足元をみて、モノを見つけ出せる国が豊か。

・地元にいいものがあるにも関わらず、別のものを作っている感じ。そうではなく、「そこにいいものがあるでしょう」と。

・商品名が浮かんで、パッケージのデザインが浮かぶのはほぼ同時。1.5秒くらい。打ち合わせが済んで、その段階でイメージはできている。

・絶対絶命のシーンに対して、エネルギーが湧き、モチベーションが上がる。「世の中から絶滅していいのか?」という思い。そこに「新しい価値」を見つけに行きたくなる。

・底辺の一次産業がしっかりすると、「産業構造の三角形、ピラミッド」が安定する。産業ピラミッドが逆三角形になりかけている。「全てのベースは一次産業」という思いがある。

・「波長が合わない人」とは仕事はやらない。典型例は「金が一番」の人。その人のやりたい事が良い事であって、エネルギーがあって、「いい」と思ったら、かなり難しい仕事でもやる。「儲かるか」は3番目くらいに考えている。「この人はやる気があるか」を見る。1番目は「面白いか」どうか。2番目は「その事業が成り立つか」どうか。水面下に沈んでいるものを表に出す喜び。

・沈下橋。渡るものだから、表面を歩ければいい。洪水のときは、川の力に逆らわなければいい。高知のオリジナルな考え方。「これくらいのデザインでいい」というお手本。「田舎にあるモノの価値」を見つけ出す、そうした足元を見つめることが、デザイナー梅原の生き方になった。

・人間に例えれば、沈下橋のような生き方がいい。無理やり自然に抵抗して、大きい橋を何十億円かけて造るのでなく、自然の猛威が来たら、静かにして、洪水が収まれば出てくる。この程度の社会や人間の考え方でいいんじゃないかと。

・「何もない」と思われているものから「何かを引き出そう」という発想。「みんなが捨てているもの」に目をつけて、そこに「新しい価値」を見出そう。

・「自分でいる場所の価値」は、自分では見つけにくい。しかし「そうですね」という人は必ずいる。そういう人と出会った時、仕事にスイッチが入る。

・「山と暮らしを再生」する取り組み。山が価値を持てば、周辺の町や村が生き返る。「新しい生き方を自分達が示す」ことできれば、地域はよみがえるのではないか。

・土地の個性を利用して、山に栗があるのなら、その栗で生きていく。育てることから商品まで山で作れたら、地域の人は食べていける。

・農業のやりにくい地域を「中山間地域」という。日本全体で73%が「中山間地域」。そこが疲弊して、モノを生まない。そこで、山に力を与え、栗が流通し始めると、山が生き返ってくる。全国あちこちではできないが、四万十地域から、自分達の生き方を示そうと。地域の生き方をまとめる役割。誰かがやらないと、地域が消滅していく。

・「地域の自立」に一番大事なことは、一言、「地方は自分で考えろ!」。

・30年くらい前「ふるさと創生事業」で国が各市町村に1億円を配布。地方は自立に向かう用意をしなかった。お金がくれば、コンサルタントなど外部に全部お願いして、自分で考えない。「地方創生」と言う国が悪いのではなく、受けてのローカルに問題がある。今まで自分で考えてなかったから、「考える力」がついていない。これが実態。「自分で考えなさい」そうすと芽が出てける。

梅原真/梅原デザイン事務所/カンブリア宮殿)

高知県の沈下橋