2014/02/22

中川政七商店

「ニッポンの工芸を元気に!」

カンブリア宮殿の今回のゲストは「中川政七商店」の中川淳社長。テーマは「伝統工芸の再生支援」。「いいものを作っているはずなのに売れない」という日本でよく聞かれる悩みに対する一つの答えが実績として示される。とても興味深い内容だった。

「ブランディング」の重要性。現在では、日本国内で売るにしても、海外顧客へ売るにしても、作り手は「売り方」まで自分たちでコントロールしないと、「認知」されないまま、衰退の道をたどる。一方、逆にITをしっかりフル活用したり、ちゃんと「ブランディング」すれば、認知され、飛躍的に売れる時代でもあるはずだ。「ブランディング」をするのかしないのかが、モノづくり企業の運命の分かれ道なう。


【語録】

・中川政七商店は、奈良で300年続く麻織物「奈良晒」のメーカー。自社製品の製造・販売だけでなく、他社の「伝統工芸の再生支援」も手がける。

・「ものが悪い」ではなくなく「伝え方」が悪い。「伝わり方」さえなんとかできれば、状況は何とかなると信じていた。自分たちのブランドと店をもとう!重要なのは「売り方」「伝え方」。表参道ヒルズへの出店。「和の世界観」で店内を統一。奇跡の再生。

・商品の横には、必ず「背景」や「思い」を伝える説明書きがある。物の価値は、そのものだけじゃない。「背景にあるもの」まで含めて物の価値。「それが伝わる環境」におかなければ、「本当の価値」は伝わらない。そういう状況を作り出せた事は大きかった。

・「ブランディング」とは「伝えるべきことを整理して正しく伝える」こと。自分たちでコントロールしなければ、「思い」や「価値観」は伝わらないだろと。「商品だけ」で全てが決まる訳じゃ無い。商品以外の、いろいろなことを含めて、お客は買うか買わないかを決める。物だけじゃない。「見せ方、世界観」も含めて「価値」だと思う。

・結局、種類が多いということは、それだけ無駄な材料、在庫があるということ。それは解決しないといけないと感じていた。

・中川流モノづくり企業の再生術「品揃えは分かり易く」「イチ押しの商品を作れ」「お客との絆を結ぶ」。

・「ブランド」を成立させるためには、「信頼」と「差別化」を長い間維持しなければならない。「何をやりたいのか、将来どうなりたいのか」、という「自分たち起点」でものづくりを考える。「デザイン」と「ネットワーク」を深く理解。

(中川淳/中川政七商店社長/カンブリア宮殿)

2014/02/14

アグリゲーター

芝沼俊一、瀬川明秀『アグリゲーター』を読んだ。5年後に主役になる働き方。今後は2社以上で仕事をするといった組織の枠組みにとらわれずに、「自由に活躍できる人材」が登場する。彼らを「アグリゲーター」と呼ぶ。満足度★★★★★。

芝沼俊一、瀬川明秀『アグリゲーター

テーマは「企業変革」と「人材育成」を同時に解決する。キーワードがタイトルの「アグリゲーター」。「アグリゲーター」とは、アグリゲートする(集める)能力を持っている個人という意味。アグリゲートとは、「短期間に社内外の多様な能力を集め・掛け合わせて、徹底的に差別化した商品・サービスを市場に負けないスピードで作り上げるやり方」のこと。

とても興味深い内容で、面白かった。『ウィキノミクス』で書かれる「マスコラボレーション」を意識して、日々の研究開発や売り込みの仕事をしているが、個人の働き方としては、この「アグリゲーター」の話がとてもしっくりきた。「そうそう、まさにコレだよ」という感じ。藤原和博『つなげる力』という感銘を受けた本の内容に近い気もした。

「20世紀の工業化社会」から「21世紀の知識社会」の変化に対して、「個人の働き方」が変わる。まさに、その「変化点、過渡期」なのが現在だと思われる。「アグリゲーター」を意識しながら、日々の仕事(ビジネス)をして行こう。5年後、10年後に振り返ったときに、この「変化点、過渡期」の意味するところを実感できるのだろう。組織や、もっと広く社会の中で、新しい職種「アグリゲーター」という役割を果たすことで、個人としての「付加価値の寄与⇒差別化」ができる予感がする。

【語録】

・ビジネスの世界では、戦う時間が限られている。手持ちのリソースも限られている。この制約条件の中で勝つ方法には2つある。1つは「アウトソーシング」。戦える事業に資源を集中し、競争力のない部分を外注していくことだ。そして、もう一つが「アグリゲート」(集める)である。ゴールを達成するため、必要に応じて企業内外から貪欲にリソースをかき集めてきて、一気に達成するやり方である。

(芝沼俊一、瀬川明秀『アグリゲーター』)

2014/02/11

そして父になる

「もうミッションは終了だ。」

京都シネマで映画『そして父になる』を観る。「6年間育てた息子は、他人の子でした」。出生直後に子供が取り違えられた二家族の話。満足度★★★★★。


映画を観終わった直後に頭に流れたフレーズは「人は人にどこまで優しくなれるのだろうか」。心暖まるいい映画だった。ラストは涙々の感動。

主人公演じる福山雅治の「心境の変化」がとても胸を打つ。色んな事があり、人生は大変だ。「父になる」のも大変だ。

人生は試行錯誤の連続。山あり谷あり。「完璧」を求めるから苦しくなるのだろう。最初から「困難はあって当然」と思った方が良さそうだ。人生とはそういうものだから。順風満帆なんぞあろうはずがない。

「学歴」とか「一流企業」など戦後日本で目指すべきもの、とされた所とは違うところに、「人としての目指す所があるような気がする」と映画を観ながら思った。子供が「お受験」「お稽古事」に邁進する所から話はスタート。現代日本の教育イメージでよくある風景。多かれ少なかれ、日本人であれば経験したであろう出来事。

福山雅治と尾野真千子が演じる「現代日本の典型例」夫婦との対比として、真木よう子とリリーフランキーが演じる夫婦が、「こういう形がいいなあ」と監督の理想と思うところなのだろう。「人と人の間の人間性」が「心の安定」や「幸せ度」の決定要因。「人の間=人間」とはよく言ったもので。真木よう子の「母性パワー」は印象にとても残った。

是枝裕和監督の映画は、これまでに『誰も知らない』『歩いても 歩いても』『大丈夫であるように』『空気人形』『奇跡』を観た。そして今回の『そして父になる』。毎回、心に栄養をもらっている。色々なテーマがあるが、とくに「現代日本の家族、親と子の関係」が中心にある。監督の次回作も楽しみだ。

『そして父になる』予告編

2014/02/09

ハローディ

「売上ではなく、日本一働きたくなる会社をつくる!」

カンブリア宮殿の今回のゲストは、ハローディの加治敬通社長。「社員のモチベーションアップ」に注力して、結果を出してきたとこが凄い。ダニエル・ピンクの名著『モチベーション3.0』の内容をすでに体現してしきっているような会社だ。しかも20年も前から実践。今回も勉強になる項目多し!ハローディのような会社の話を知ると「トップの重要さ」が良くわかる。企業や組織では「社員のやる気をいかに向上するか。モチベーション・アップ」が業績向上のための最重要課題なう。


【語録】

アミューズメント(娯楽)フードホール。どことも違う陳列。圧倒的な品揃え。1坪当たり売上高は、大手スーパーの約2倍。

「粗探し」はしない。「良い点」を探して「従業員のやる気」を引き出す。

仕事をする時に「一番つまらない会社」とは。「これだけはやっておきなさい」「何も考えなくていい」と言われる仕事は、つまらないと思う。

そうではなくて、やっていると「なんかこうしてみたい」「ああしてみたい」とか、「応用すると楽しいな」となると仕事は楽しいと思う。

「アイデア」を出してくださいと。みんな何か「得意技」を持っているはずだと。

給料については、小売業は、そんなに特別な技術ではない。ましてや肉や魚を売っている。だから、そこまで極端に上げられない。やはり「自分のやっていることを認めてもらえる」ことがモチベーションアップの源泉。

普通の仕事は、そんなに楽しくないと思う。ただ「ハロリンピック」など楽しい仕掛けが時々入ってくる。そこで、自分で努力して、売場をつくり、お客に感動されて、喜ばれたりとか。「他人の幸福」に寄与できる喜び。

「自分が幸せになるためには、どうしたらいい?」と。私が思うのは「自分が幸せになりたいと思ったら、周りの人を幸せにしたらいい」と。「自分が感動したい、と思ったら、周りの人を感動させる」と。「自分が幸せになるためには、売場を使っていいよ」と。「だから、お客を喜ばせて感動させるんだよ」と、いつも言っている。20年間使い続けている。

仕事は、楽しくないものかもしれないが、もし楽しいと思ったら、「人生ってめちゃめちゃ楽しい」と思う。

(加治敬通/ハローディ社長)


2014/02/03

少女は自転車にのって

京都シネマで映画『少女は自転車にのって』を観る。サウジアラビア初の女性監督作品。問題児少女ワジダがコーラン暗誦コンテストに出る。キーワードは「反抗」。満足度★★★☆☆。「イスラム社会」を垣間見る社会勉強になった。


サウジアラビアは「映画館の設置」が法律で禁じられている。その国でしかも初の女性監督作品。確かに「奇跡」の映画だ。イスラム教の厳格な教えに従い、女性の自由が極端に規制された社会。そこでの少女の「反抗」。これからサウジも変わっていくのかな。

こういう社会の話を観ると、今の日本社会が「いかに自由か」を実感する。「自由を抑制する」というのは、支配者階層、既得権益層には「特権を守る」という意味で、都合が良いのだろう。「IT革命」によって、イスラム社会でも今後自由化が進むのかもしれないし、そうあってほしい。

それにしても、この映画の中では、男はつくづく「悪役な生物」だなぁ・・。トホホ。

『少女は自転車にのって』予告編動画

2014/02/02

浜松フォトニクス

カンブリア宮殿の録画を観た。今回のゲストは、浜松フォトニクスの晝馬明(ひるまあきら)社長。自分の大学で専攻した学科が「光応用工学」だっただけに、「光技術」の会社である浜松フォトニクスの話は、技術的にもビジネスにも、興味津々で面白かった。今は「太陽電池」の世界にどっぷり漬かっているけど、学生時代は、レーザーなど「光技術の世界」にいたんだなぁ、と懐かしくもあった。

企業理念は「人類未知未踏」。「世界初!」がずらり、という浜フォトの技術力も凄いし、その種(シーズ)を生かして、しっかり収益につなげている点が、ビジネス的にも凄い。村上龍が絶賛!これからも「技術力で食っていこう」というの日本の部材メーカーがお手本にするような会社ですな。浜フォトの会長、社長の「会社トップの力強い言葉」が、技術者の心に力強く響いた。


【語録】

ノーベル賞、「ヒッグス粒子の発見」に浜フォトのセンサーが貢献。

浜松フォトニクスの技術は全て「光」を使ったもの。光技術の最先端企業。年商1000億円。

稼ぎ頭は「半導体、光センサー」。種類は3000?4000種類。血液検査機向けセンサーはシェア90%以上。光電子増倍管。光子を100万倍の電子信号に増幅する。

「光」は、まだまだ色々なものに使える。我々が持っている光技術のシーズ(種)と、新しい産業のニーズを見つけ、新しい産業を生み出す。そういう可能性を秘めている。

我々の光産業は逆三角形のピラミッドになっている。我々はお客に最新のシーズ(ビジネスの種)を提供して、ニーズとマッチングさせていく。

浜フォト勝利の方程式「未知未踏に挑めば、儲けは後からやってくる」。カミオカンデでは大赤字。しかし、国は巨額の予算をつけた。スーパーカミオカンデ、建設費104億円。これにより、浜フォトは、30億円の莫大な売り上げを手にした。

未知未踏に挑む企業として生まれた。光の追求。

「分からない問題」をどう捕まえるか。それは無限にある。「分からないこと」を1つ捕まえて、分かっていることと組み合わせれば、これは全部「世界で初めての組み合わせ」になる。ぜひ「分からない」ということに挑戦してほしい。

我々は「未知未踏」に挑まなければならない。そこに行かなければ、新しいものは得られないし、すでに誰がいれば、そこに意味はない。できないと言わずに、やってみろ。

(晝馬輝夫/浜松フォトニクス会長)

高柳先生は「幸運の女神は前髪しかない。後ろから女神を追いかけても、ツルツルでつかめない」と。幸運の女神を捕まえるには、幸運の女神の先回りをして、前髪をつかまなくてはいけない。「とにかく人の真似をしていたらダメだ」「人のやっていないことをやってみろ」と。

浜フォトの研究費は毎年10億円。「レーザー核融合」の実験。目指すのは、光の技術で世界を変えること。

日本の国や企業も「新しい技術」を提供して、海外に出していく能力を持たなければならない。リーマンショックで日本経済は低迷したが、将来の芽を持つ技術を常に探求してきた企業はすぐにV字回復した。「常に新しい技術を追い求める姿勢」が非常に必要なことではないか。

自分達でできる範囲で仕事をやっていたら、それ以上の進歩はない。「自分達ができないこと」そこにチャレンジして、失敗してもいい。失敗しても新しいことをやり続けていく。「愉快に仕事」をしろ。 全ては仕事のため。

(晝馬明/浜松フォトニクス社長/カンブリア宮殿