2014/11/23

天才スピヴェット

京都シネマで映画『天才スピヴェット』を観た。10歳の天才科学者が双子の弟の死後、都会へ出る。満足度★★★★☆。


『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督。「家族の再生物語」のストーリーも良かったが、作り込まれた映像も良かった。原作、監督の世界観が伝わってきた。3D映画が見物なのだが、京都シネマでは、2D上映だったのは残念。

フランス人監督がカナダで撮影した「古き良きアメリカ的」な映画。監督曰く、原作である『T・S・スピヴェット君傑作集』は、「科学と叙情の結びつき」「家族、罪の意識」「メディアに対する批判的な視線」など沢山の要素が詰まった複雑な物語なのだとか。感動的なラストに涙。

『天才スピヴェット』予告編

2014/09/20

銀翼のイカロス

池戸潤『銀翼のイカロス』を読んだ。半沢直樹シリーズ最新巻。航空会社の再建問題。債権放棄と政治スキャンダル。超一流のバンカー達の仕事ぶりに、最後しびれた!満足度★★★★★。



【語録】

どうするもこうするも、「自分が正しいと思うことをする」しかないだろう。

渡る世間は鬼ばかり。

正論がいつの間にやら端に追いやられ、詭弁がそれにすり替わる。考え過ぎた挙げ句、時としてバカでもやらないような事をするのが組織というやつだ。

腐った連中が、今やお偉いさんになって、この組織でのさばっているとあっちゃあ、どうにも気分が悪いってもんだろう。世の中、正義はないのかって話だ。

隠し通せばいいってもんでもない。隠蔽は隠蔽を生む。隠蔽はあくまでも結果であって、原因は組織の体質にある。銀行の信用ってのは、それを乗り越えた所になくちゃダメなんだ。  

徹底的にやらせてもらう。警察にあって銀行にないものが一つある。それは、時効。すでに回収されていようと、銀行員には時効はない。きっちりけじめをつけるのが、バンカーの掟だ。

どこかに突破口があるはずだ。

銀行において、「情報の優劣」が物事の勝敗を決する場面は少なくない。

たとえ相手が政治家だろうと、関係ない。この際、きっちり片をつけてやる。やられたら、倍返しだ!

身の丈に合わない欲を掻くから、面倒なことになる。人もそうだし、実は会社だってそうだと思う。「できもしないことをやろう」とするから無理がある。結局、そんな会社は誰も幸せにしない。社業もうまくいかないし、社員だってストレスで参ってしまう。全ての会社には、その会社に合った「身の丈の欲」ってのがあるんですよ。

水は高い所から低い所へしか流れない。つまり「自然な流れ」ってのがある。因果応報が世の中の理だ。であれば、それに従うのが一番楽だ。欲を捨てれば「真実」が見えてくる。悪いものは悪い。いいものはいい。要は、それだけのことなのだ。

物事の是非は、決断したときに決まるものではない。評価が定まるのは、常に後になってからだ。もしかしたら、間違っているかもしれない。だからこそ、「今自分が正しいと信じる選択」をしなければならない。決して後悔しないために。

(池井戸潤『銀翼のイカロス』)

2014/09/07

自然エネルギー革命をはじめよう

高橋真樹『自然エネルギー革命をはじめよう、地域でつくるみんなの電力』を読んだ。日本で起こっているボトムアップの「エネルギーシフト」の解説。色々な地域ネットワークの活動やエネルギーの作り方を知ることができる。満足度★★★★★。

「企業目線」ではなく「市民目線」で、エネルギーシフトの取り組みを考えると、これこら日本で起こるであろう「電力自由化」で、市民各人の果たす役割は色々あるのではないかと思った。

この本の言わんとすることは以下の箇所に集約。

【語録】

・むしろ「小さい方」がいい。それぞれが自分にできる小さな取り組みを見つけて、具体的に進めていくことが大切。その第一歩は、僕達が「与えられたエネルギーを消費することしかできないか、か弱い存在」なのではなく、「自分達自身の手でエネルギーを創り、社会を変えていくことができるのだ」と自覚することから始まる。小規模分散型の社会を実現できる自然エネルギーは、その変化を生み出す最適ツールと言える。(P218)



2014/09/06

辻調理師専門学校

徹底的な「本物主義」。次の料理界を担う「人材」をどう育てるか。

カンブリア宮殿の今回のゲストは、「辻調グループ」代表の辻芳樹さん。辻調、つまりあの有名な「辻調理師専門学校」。「世界三大料理学校」と称される日本最大の「食の教育機関」、卒業生13万人。創業は、辻芳樹さんの父(辻静雄さん)が読売新聞の記者をやめて設立。個人としても「奥深いフランス料理の研究」で、フランス料理の歴史に名声を残す。

料理の専門学校なので「テクニック重視」かと思いきや、徹底的な基礎力を身につけた上で「考える力」「学ぶ力」を身に付けることを重視。「覚えた料理の数」ではなく、「どういう思考過程でこの料理が作られているか」を理解できれば、レシピはそこから派生して数多く作れると。とても「生徒思い」の経営者の考えだ。社会に出た後、生徒が料理人として、自立していけるようにと、教育に様々な工夫(実際の店舗で実習、フランスに学校を設立、本物の食材を使用など)をこらす。「人材育成」にかける情熱の理念が素晴らしい。

料理の世界だけでなく、「技術者」を育てる大学(工学部など)も本来このスタイルであるべきだろう。知識を詰め込むだけでなく、「基礎力+創造力、学ぶ力」。社会に出ると、大学で学んだ当時の最新知識はすぐに陳腐化するので、「新しい事を学ぶ力(吸収力)」が重要になる。

辻芳樹さんや辻調グループの「料理人を育てる」という熱い理念がひしひしと伝わってきた。卒業生(萩シェフ)で「1日に1組だけもてなすスタイル。野菜を提供する農家にもブランドがつく」という話のところはとても感動的だった。これぞ「創造力⇒オリジナリティ」。見習いたい。

■1日1組のフランス料理店「Hagi」


【語録】

・「ただ単に言われた事をやって、それがどういう料理につながっていくかを全く考えないで、やみくもに苦労する」というのが悪いパターンの組織だと思う。いかに一人一人が「労働力」ではなくて、「考える戦力」として、調理場で働いていられるか。そういう人材を我々は作っていきたい。

・料理を理解するというのは「味覚で分かる」「頭で理解する」「技能で再現できる」。この3つがないと、料理は絶対にできない。

・「どうやったら自主的に彼らが能動的に勉強するようになるか」「最終的には、彼らが就職した時点で、自分がどういうキャリアで、どういう料理を臨みたいのか」「どういう料理を探し当てて、その道に自分の人生を捧げたいと思える」まで、この3つを在学中に、何とかして与えたい。

・「言われてやる仕事」というのは、「仕事」ではない。

・「料理」というのは、とことんまで「芸術」に近い世界でありながらも、「芸術」になってはいけないものである。それぐらい、高貴な深みを持った職業に携わる人達に、凄く敬意を表したい。その人達を我々は育てているという気持ちを私だけでなく、全職員が持っている。

(辻芳樹/辻調グループ代表/カンブリア宮殿)

2014/08/31

浜中町農協

「私がやってきた大抵のことは反対されなかったことはない。」

今回観たカンブリア宮殿のゲストは、北海道浜中町農協組合長の石橋榮紀さん。農協といういかにも堅そうなイメージの組織にも、変革を行っている凄いリーダーがいるんだ、といつもにも増して興味深い内容だった。変革者は、「異端児、変わり者」と呼ばれるのは、世の常。石橋さんも、まさにそのままのストーリー。そして、「先見の明」が凄い。分析機器を導入して「データの見える化」⇒牛乳の「高品質化(差別化)」、酪農者の「働き手の環境づくり」に、スーパー経営、土木業者の仕事などの「街の生態系づくり(エコシステム構築)」と、勉強になる内容がぎっしり。

「ハーゲンダッツに採用されている牛乳!」という宣伝文句も、記憶に残りやすく、素晴らしい。自社の製品を売るときは、こういった顧客の印象に残りやすい「特別な宣伝文句」を考える必要があるな。番組を観始めるとき、今回のンブリア宮殿のテーマは「ハーゲンダッツ」と勘違いしていた・・。人間の認識はいかに適当か。「ハーゲンダッツ」というネームバリューが高いブランドを利用して、「浜中町農協の4.0牛乳」の高品質イメージのブランドを世の中に拡散させる。お見事!


【石橋さん語録】

・数々の改革を成し遂げた農協の異端児。酪農で飯を食うためには、酪農に必要なことは何でもやろうと。他がどうであれ、うちが必要だと思ったことはどんどんやる。

・農協は組合員にサービスするところ。全てがそう。組合員の経営と生活を守るために、それぞれが役割を与えられて、仕事をする。組合員のサポートをする役割を果たす。

・「いい牛乳」というのを「見える化」にしようとデータを示して「これはいい牛乳」としたい。そのためには酪農の生産要素を全部「データ化」していこうと。合わせて、酪農家の経営をサポートして、コストを下げていこうと。「データを見せる」ことによって、牧場にまく肥料も吟味ができる。肥料も無駄を減らしていくことで酪農家の所得が増える。そのために作ったのが、「酪農技術センター」だった。

・私がやってきた大抵のことは反対されなかったことはない。

・幸せ酪農。酪農ヘルパー制度。酪農農家が休みを取るための制度。

・土木建設業者にも、生き残って仕事をしてもらえるような「環境づくり」をしていくのも、農協の仕事。

・地域の生活を守って「生きる、働く、暮らす」ことができればいい。躊躇していても何も生まれない。とにかく前に進もうと。無駄な不安を持つよりも、根拠がなくても、自信を持ってやろうと。

・農協は「補助金漬け体質」になってしまっている。補助金を何が何でももらってやろうと、陳情行政をやる。そうじゃなくて、私が最近言っているのは、「自主・自立でいこう」と。どうせ国だって、北海道だって、金がないんだから。「当てにしないで、自分達でやっていこう」と。「アイツは変わり者だから仕方がないな」というのが周りの評価。

・農協の上部組織からどう言われようと、「うちの組合員に飯を食ってもらわなきゃいけないから、あんた達の言うことは聞けない」と話をする。それは、その農協が「組合員のために仕事をしているかしていないか」だけの差。変化はある。

・上部組織は「農協のために仕事をする」ということを忘れてしまった。組織は大きくなれば、「自分の組織を守る」ようになる。それに従わない農協も増えつつあるのも事実。

・農場を新規就農者に提供。必要だからやるだけの話。今、新規就農者を入れたくても、人材が見つからないのが全北海道の悩み。だから、うちのようなやり方をやろうという動きが、ようやく生まれてきた。

・自分の目標、夢をしっかり3年間の研修中に作れと。「俺はこういう酪農経営をやりたい」という目標を作って、新しい牧場をつくる時に、「こんな酪農がしたいから、こうしてください」と注文をつけろと話している。「夢を持て。自分の夢をきちんと形にして持て」と。

【デスク上のメモ】

人がどう思うかではなく、自分がどう思うかを大切に。

効率を優先させない。

何が大切かを見極める。

摩擦や揉め事を恐れていては、何も前に進まない。

地域再生は「相互扶助の精神を再興」することから。

(石橋榮紀/浜中町農協組合長/カンブリア宮殿)

石橋さんの卓上メモ

2014/08/15

小林一三記念館

以前より気になっていた池田市にある「小林一三記念館」へ。見応え抜群だった。

小林一三は、阪急の生みの親である起業家。創業したのは、阪急電鉄をはじめ、宝塚歌劇団、映画の東宝、六甲山ホテル、他沢山。東京電燈(現東京電力)の社長もして、立て直したらしい。

アントレプレナー(企業家)そのものな人だな。現代でいうなら、ソフトバンクの孫正義社長みたい。 「文化」へのこだわりも凄かったので、宝塚劇場や東宝映画など誕生したわけだ。

阪急池田駅で下車

「小林一三記念館」は池田駅から徒歩10分ほど

池田市の地図。池田城とか色々あり。

「小林一三記念館」に到着

「長屋門」を通り中へ

「長屋門」の説明

逸翁美術館旧館(雅俗山荘)の説明

小林一三記念館の地図

和の雰囲気が漂う

笹の庭

「長屋門」からの通り道

小林一三記念館のシンボル的な建造物の「雅俗山荘」

「雅俗山荘」の説明

登録有名文化財

蝉の抜け殻を発見

小林一三の最後の句

「小林一三の最後の句」の説明

スペイン瓦を乗せた塀

「塀」の説明

小林一三が生活していた「雅俗山荘」の中へ

小林一三の肖像画

小林一三の慶応義塾時代の写真

ソファー

小林一三コレクションの展示

イベントのチラシ

執務室

応接間

雅俗山荘の隣にある庭園へ

人我亭

茶室「人我亭」の説明

茶室「人我亭」

茶室「費隠」

茶室の壁に名前が

茶室「費隠」の説明

茶室「即庵」

茶室「即庵」の説明

邸宅レストラン「雅俗山荘」

雅俗山荘の裏手

庭園の巨大な敷石

逸翁美術館へ

「お話し美術館」を展示中

逸翁美術館の隣にある「池田文庫」

インスタントラーメンのまち池田

小林一三記念館」「逸翁美術館」「池田文庫」を訪れていると夕方になりタイムアップ。池田城や「インスタントラーメン発明記念館」は行けずじまい。池田市は観光する所が色々あるな。今度また来よう。

2014/08/09

モスバーガー

「日本流ハンバーガー」

2013年8月15日 放送、カンブリア宮殿のゲストは「モスバーガー」の櫻田厚社長。自分も「モスバーガーファン」の一員であるので、とても興味深かった。ITはMacファンだけど。

好きな「ブランド」の生い立ちの歴史や製品開発のストーリーを知ると、増々ファンになる。モスではいつも「テリヤキバーガー」ばかり食べているので、今度は「ライスバーガー」、とくに番組でも紹介された「モスライスバーガー海老しんじょ(350円)」を食べてみよう。

台湾でも、モスバーガーは、もの凄く人気があるらしい。ライスバーガーが圧倒的に1番で売れているとか。そういや、出張で台湾に行くと、街の色々な所で「モスバーガー」を見かけるな。「Japan」ブランドの代表格の一角になっている。

「日本らしさ」を売りにする。モスバーガーの根底思想。「おもてなし」思想も、直接は語られなかったが、ちらほら。そりゃ日本人が好きになるわけだ。そして外国人にもウケる。「コピー」ではなく「オリジナル」。日本のビジネスで、ハンバーガー以外でも、この発想は使えるはずだ。


【語録】

全国に1400店舗あり、売上が900億円を超える。

1971年にマクドナルドが日本初上陸。「日本にハンバーガーブームがくる」と確信。1972年にモスバーガーを初出店(東京・成増)。櫻田厚社長は、当時の第一号店の店長。

モスバーガーの「MOS」の由来。Mountain(山のように気高く堂々と)、Ocean(海のように深い心で)、Sun(太陽のように燃え尽きることのない情熱を持って)。「広く大きな自然のような人間集団でありたい」という創業者の思いがこめられている。

日本で生まれたので、「日本人の心とか和とか」そういうものをいつも忘れてはいけないと思っている。

商品というのは飲食に限らず必ず「適正価格」「正価」がある。「値段を下げる」ということは、戦術論であると思うが、下げた時にお客は増え、元に戻すと離れる。これを繰り返しやっていると、業界では「消耗戦」になていく。そこは堂々と商品だけではなく、「サービス力を上げる」とか、「店をもっときれいにする」とか、「他の価値を上げていく」のが正攻法ではないかと思う。「ハンバーガーの価値を下げたくない」という思いは強い。

「直接何度も話し合う」こと。これだけメールの時代になってきて、「本当に理解しあっているか」確認できない。会って、分かってくれるまで、繰り返すしかない。面倒くさいことを、面倒くさがらずにやる。そうしないと、どこかで伝承できずに断線してしまう。

「直接会う」ことは、それ以上のことはない。言葉とか表情とか態度で、私も元気をもらえるし、私が言ったことに対して返ってくる。かっこよく言えば「相互理解」。

新しいメニュー「モスライスバーガー海老しんじょ(350円)」「とびきりハンバーグサンド(デミグラスソース アリゴ添え)」。

新商品開発はベースのところは「ゼロ」。ある程度の条件を与えると、その条件の中でしか発想は出てこない。個々の食材はいいが、合わせた時にバランスが崩れるものは作品にならない。「とにかくまずやってみなさい」と。

(櫻田厚/モスバーガー社長)

近所にあるモスバーガー

建物のデザインもGood!

よく見ると「Japanese Fine Burger」とちゃんと定義

昨年食べたモスバーガーの「トマト・レタス」