2014/05/31

ダイソン

日常の不満こそが発想の源。エンジニアこそが、メーカーの価値を決める!

今回のカンブリア宮殿のゲストは、英国掃除機メーカー「ダイソン(Dyson)」の創業者、ジェームズ・ダイソン。2006年に自伝『逆風野郎!ダイソン成功物語』を読んで以来、Dysonのファンだ。家の掃除機も今はもちろんDyson。エンジニアとして、「世界を変えたいなら、アドバイスを聞くな!(「これまでと全く違うことをする」のだから、アドバイスをできる人はいないはずだ)」というアドバイスが印象に残った。

ジェームズ・ダイソンの言葉から、Appleのスティーブ・ジョブズ、Amazonのジェフ・ベゾスらの偉大な創業者と同類の「自分が生み出す製品による社会変革」の信念、パワー、つまりPassion(情熱)を感じる。

「掃除機+デザインエンジニアリング」で、Dysonの「吸引力が変わらないただ一つの掃除機」サイクロン掃除機が誕生した。「太陽電池+デザインエンジニアリング」では、どんな太陽電池セル(モジュール)が生まれるのだろうか。

■カンブリア宮殿「常識破りの家電メーカー・ダイソン」



【Dyson語録】

「ぼくは賢い人間ではなく、根気強い人間でいるつもりだ」。5127個目の試作品で完成。

「他と同じ考え」でモノを作れば、「同じタイプの製品」しかできない。その場合、勝つための唯一の方法は、価格を下げて買う気にさせることなのだ。でも消費者はだまされない。「純粋に良い商品」を求めるから。結局、景気が悪くなった時に生き残るのは、「最高の製品を作っている会社」なのだ。

「失敗を乗り越えて、問題の解決策を探る」、それが人生というもの。学校では「一番多く失敗を乗り越えた人」に、最高点を上げるべきだと思う。

ダイソン氏が好きなデザイン。共通点は、全て、それまでの常識を覆した「画期的な機能」を持っている。

Design is only truly beautiful when it works properly.

ダイソンでは、「見た目の美しさ」のことではなく、「素晴らしい機能」を持った製品こそが、真の意味での「優れたデザイン」という。

一番大切なことは、「機能」が素晴らしいかどうか。理由は単純だ。見た目が良くても、機能が悪ければ、すぐに嫌いになってしまう。見た目が悪くても、機能が良ければ愛用するでしょう。

Dysonには社内にデザイナーは一人もいない。新たな価値を生み出せる優れた技術者「デザインエンジニア」というプロ達が商品開発を担っている。

ある問題点について、これまでのやり方を根本的に変えて、今までよりも良いやり方にする、それが重要だと思う。

私は「デザイン」と「エンジニアリング」は分けるべきではない、と思ってきた。デザインを「見かけのもの」だけだと思っている人もいるが、「使い勝手や素材、耐久性、全て」がデザインと関係している。

ダイソンにはデザイナーはいない。デザインもできるように訓練されたエンジニア(技術者)がいるだけ。⇒デザインエンジニア。

ダイソンの会社の魅力を一つ上げるとすれば、それは製品であって経営ではない。会社経営ではなく、製品が一番大事なのだ。良い製品を作れば、会社は発展できる。それが何よりも重要なことだ。

製品よりも会社が大事だ、と思った瞬間に問題が起こる。皆が社内しか見なくなり、経営ばかり気にし始めるからだ。

日本の問題は、マーケティング担当者が、「商品にちょっとずつ改良を加えることを良し」としている点。何かを大きく変えるのは難しいし、勇気がいる。莫大なお金をかけないと、新しい技術は生まれない。勇気を出して、多くの資金をかけることだ。

 エンジニア(技術者)こそが社会の様々な問題を解決できる。でも、まだ数が足りない。もっと若いエンジニアが必要だと思う。

私が絶対にしない事の一つがアドバイス。唯一できるアドバイスは「アドバイスは聞くな」ということ。「人と違うことをして、世界を変えたい」とする。「これまでと全く違うことをする」のだから、アドバイスをできる人はいないはずだ。

経験なんて必要ない。経験は過去に上手くいったことであり、将来うまくいくかどうかは関係ない。だから「アドバイスに耳を傾けるな」と言いたい。やりたい事をやって、絶対に諦めてはいけない。

(ジェームズ・ダイソン/ダイソン創業者)

我が家で活躍中の掃除機Dyson


2014/05/18

柿安

経営理念「おいしいものを、お値打ちに、提供する」のために独自戦略(オリジナル)の追求。

今回のカンブリア宮殿のゲストは、総菜店「柿安ダイニング」の赤塚保正社長。プロの料理人が作る「デパ地下の人気惣菜店」。今回は「食(惣菜)」の分野で、「独自技術」「高付加価値」「時代を先取りした業態変化」と、カンブリア宮殿に紹介される優良企業の要素を完璧に備えた会社。それらが何故できたか、というストーリーがまた面白い。

創業者の理念、そして訪れる最大の危機(今回はBSE問題)、その「ピンチをチャンス」ととらえたときに、現在の「百貨店内の専用厨房を用意し、プロの料理人が惣菜を作る仕組み」という独自戦略が誕生した。そして、また新しい事業をトップが立案し、現在進行形で開拓中。

一番印象に残ったのは「トップの本気度」。社長がここまで本気なら、社員もそりゃ燃える⇒本気になる⇒「人が動く」⇒会社業績が伸びる。この「会社トップの熱意」という"人間的な部分"が、「脱工業化社会」の21世紀の企業ではより重要だな、と思った。

柿安と言えば、京都駅ビルに「三尺三寸箸、JR京都伊勢丹店」がある。また今度行ってみよう。

■カンブリア宮殿「柿安」
■柿安

赤塚保正社長(柿安本店)
【語録】

デパ地下に革命を起こした店。女性に大人気の惣菜店。挑戦が伝統を守る!老舗企業のサバイバル術。

常識破りの「出来たて、プロ味」。日本初の「店頭厨房」を導入。 デパートの地下3階。柿安だけが持つ専用厨房。専用厨房を持つことが出店の絶対条件。料理人が作る出来たて惣菜。他ではマネできない味が客を引きつけていた。

お客を集める「攻め盛り」。お客の心を読む「司令塔」。店長権限「何をどれだけ作るのかを決められる」 。

柿安は、140年以上続く「老舗」。精肉店をメインに発展してきた。「すき焼き」「シャブシャブ」の料亭、「ビュッフェスタイル」のレストラン、和菓子の専門店も全国展開。「内食、中食、外食」のすべてを手掛ける「食の総合企業」。

食べ物は限りなく出来たての方が美味しい。美味しいものさえ出せば、お客が喜ぶ。お客が喜べば、自然とお客が集まり、ちゃんと成り立つ。

どうしても失敗を恐ると、挑戦しなくなる。そういう点では「失敗してもいいよ」と。店長の中でも商売感覚がある人は20代前半でも、どんどん挑戦していく。

柿安最大の危機。2001年に発生したBSE、狂牛病問題。牛肉離れが起こった。1億8000万円の赤字。柿安が出した答えは「従業員は一人も解雇しない」。人あってのモノづくりであり、経営。飲食店の大部分を閉鎖を決断。かわりに総菜店を集中的に出店。料理人に仕事を与えるために年間20店もオープンした。プロが作る惣菜が人気を呼んで、店は大繁盛。翌年にはV字回復。

2006年、先代から社長を引き継ぐ時に「一言だけ言いたいことがある」と。変えていけないものは「経営理念」。変えていいものは「経営理念」以外のすべてを変えていい。経営理念「おいしいものを、お値打ちに、提供する」。

伝統を守りながら、新しさも打ち出す。これが柿安代々の流儀。

老舗企業は「のれん」を守るためにどうしたら良いかを考え続けるが、柿安にとっての「のれん」は、ただ守るというものではなく、様々な形で失敗を恐れずに挑戦することで、伝統が引き継がれていく。

「140年の伝統で培った本物の味」と、「時代にあった業態を開発する力」、それが必要だ。時代の変化をキャッチして、切り替えるのは柿安・赤塚家のDNA。

第二の創業。そのきっかけは、2001年のBSE問題。肉が売れなかった。それを売れないと悩んでいてもしかたがないから、「今のピンチをどうチャンスに変えるか」を当時の社長は考えた。そこでチャレンジしたのが流行になると思われた「中食」惣菜事業だった。

過去の延長線上で経営をやっていても大体先が見えている。「それを絶対変えてはいけない」というものは語り続けようと思うが、それ以外のものは、時代の変化が激しいから、「どんどん今の若い世代の人達と中心にやっていきなさい」というメッセージだと思った。挑戦したから「老舗」になれた。

常にお客から見て価値があるか、価値感があるのかないのか。「値打ち」というのは、決して値段が「高い」「安い」ではなく、値段以上の価値があれば、「お値打ち」だと思う。

価格設定は一般的に「原価がいくらだから、売価がこう」と決められるが、「原価積み上げ方式の価格設定」は絶対に失敗する。

実際に原価率が高くても価値がなければ売れないし、原価率が低くても、お客が価値を認めれば商品は売れる。

「好きこそ物の上手なれ」という言葉がある。自分が大好きな事だったら、その事に対して一生懸命になれる。一生懸命になれるから、いい成果が出て、褒められる。そして、さらにいい成果が出るようにプラスのスパイラルになる。まさに「好きこそ物の上手なれ方式」。

(赤塚保正/柿安本店社長/カンブリア宮殿)