2013/08/31

しあわせのパン

私のマーニを見つけた。

iTunesで映画『しあわせのパン』を観た。北海道洞爺湖畔のパンカフェ「マーニ」を営む夫婦と客のドラマ。満足度★★★★★。期待どおりのいい映画だった。


主演が原田知世大泉洋。この二人が夫婦役を演じる。そこへ近所の人達や「夏」「秋」「冬」三季節の来客者のストーリー。そして最後に夫婦の「春」の話。商業主義とはかけ離れた店で、人間的な心と心が触れ合うのがいい話で感動を誘う。パンや野菜の料理も絶品の見応え。観るだけで、食べれないのが残念。洞爺湖の風景も素晴らしい。洞爺湖や北海道の大自然の中に行きたくなるなぁ。

オーベルジュ(Auberge)とは、宿泊設備を備えたレストラン。フランスが発祥。映画中のパンカフェ「マーニ」もこのオーベルジュ式。「人の交流の場」としてとても良さそう。脱サラして、こういう店を開店してみたい気もするが、どないやろか、マーニ。と、誰に聞いてるねん。( ̄▽ ̄)

原田知世大泉洋が夫婦役

マーニでの「夏」「秋」「冬」「春」の4つのストーリー

マーニで出される絶品のパンと料理

北海道洞爺湖の大自然に囲まれたマーニ

映画『しあわせのパン』予告編動画

2013/08/25

零戦

独特の考え方、哲学のもとに設計された「日本人の血の通った飛行機」、それが零戦。

堀越二郎『零戦』を読んだ。零戦の主任設計者であった著者が、零戦のアイデアから完成、終戦までを記録する。満足度★★★★☆。

飛行機の開発では後発であった日本が、後に伝説となる名機「零戦」を生み出し、一気に「世界一の性能」を誇るようになる。「どのようにその零戦が生まれたか」という話を、零戦の生みの親(主任設計者)が時代背景とともに詳細を解説する。そりゃ、面白い訳だ。戦闘機マニアの宮崎駿監督が映画の題材にする訳だ。

研究開発者としての「考えて、考え抜く(仮説⇒フィードバック)」ことと、「実行(現実に落としこむ⇒実現させる)」の大切さがよくわかる。飛行機は「人命」に直に関わるので、設計思想や試作の難易度は、相当ハードルが高い。しかも、後発から始めなければならない「環境的にとても劣勢な状況」から、世界一のモノづくりを目指し、やり遂げた。

宮崎駿監督のいうように、堀越二郎に「熱狂」がなければ、できなかっただろうなぁ。「世界一のモノづくり」をするならば、研究開発者は、良い意味でマッドサイエンティスト(Mad scientist)やマッドエンジニア(Mad engineer)である必要があるのだろう。熱狂かつ冷静な頭脳。

日本の技術者と現場は「世界一のいいモノづくり」をするが、「戦略」で欧米に劣り、最終的に敗北する、というのは、零戦もそうだし、「半導体」など戦後のモノづくりも同じような気がする。「リーダー育成」や「組織力」に力を入れた方が、費用対効果が大きいのではなかろうか、と皆さん思うが、結局うやむやで実行できないのが、これぞ「日本的」なところ。

この「日本的な非効率なところ(トップがダメで、現場が優秀)」が、「技術者と現場で、世界一のいいモノづくりをする土壌」になっている、ということも考えられるので、微妙なところ。トップが優秀で、トップダウンで全部口出しすれば、現場や研究開発者の「熱狂」は生まれないのかもしれない、というジレンマ。さて、どうしたことやら、堀越二郎さん・・。

ジブリ映画『風立ちぬ』を観て、関連書であるこの本を読む動機になった。次ぎは、もう一つの原作、堀辰雄『風立ちぬ』を読もう!



【語録】

・当時の世界の技術の潮流に乗ることだけに終始せず、世界の中の日本の国情をよく考えて、独特の考え方、哲学のもとに設計された「日本人の血の通った飛行機」、それが零戦であった。こんなところに、零戦が今も古くならず、語りづがれている理由がある。

・自分の仕事に根深くたずさわった者の生涯は、一般の人の生涯よりも激しい山と谷の連続である。(イゴール・シコルスキー/ヘリコプターの父)

・堀越二郎は、人前では実に平静を装って円満に見えるけど、「やりたい事を何とかやりたい」と思っている。実は、要求に応えて零戦を作ったんじゃなくて、「自分のやりたい事に軍の要求を合わせた」だけなんじゃないだろうか。熱狂があったはず。それは「美しいものを作りたい」という熱狂。(宮崎駿)

・アイデアというものは、その時代の専門知識や傾向を越えた「新しい着想」でなくてはならない。そして、その実施は人よりも早くなければならない。戦果をうるには、時代に即応するのではなく、時代より先に知識を磨くことと、知識に裏付けられた勇気が必要である。後進国が先進国と肩を並べるには、それだけの覚悟が必要なのだ。

・これを銘記しないと、「どんな企画でも、今目の前に見ている世界の一流品を目標にして、それに近づくための演習に終わってしまい、これを抜くことができなくなるおそれ」があるのである。

(堀越二郎『零戦』)

2013/08/24

タイピスト!

タイプだけが得意なんです。

京都シネマで映画『タイピスト!』を観た。フランス映画、原題『POPULAIRE』。1950年代のフランス。ノルマンディーの保険屋さんの秘書に雇われた女の子が、鬼コーチ(保険屋さん)の猛特訓でタイプ早打ち世界大会優勝を目指す。満足度★★★★★。

「スポ根」かつ「恋愛モノ」のコメディー。とても面白かった。頑張る姿や成長する姿に感動するなぁ。日本人好みの内容だと思う。製作陣は『オーケストラ』や『アーティスト』と同じ。そりゃ面白いわけだ。映画の勢いが半端無い。この3作品は「人生」に対して共通するメッセージがあり、「フランス文化」の思想につながりそうだ。

「女性の社会進出」「強みに特化して鍛錬」「努力する本人と優秀な指導者、彼らをサポートするまわりの人達」「秘書との恋愛」とテーマが明快でかつ痛快なサクセスストーリー。喜怒哀楽の「人間模様」がよくでていて、感情移入し易かった。

過去の色々な映画の名場面をオマージュ(フランス語:hommage。尊敬する作家や作品に影響を受けて、似たような作品を創作する事)しているらしい。その辺の事もわかるとさらに面白く観れるのだろうな。

映画『タイピスト!』ポスター

主演はデボラ・フランソワDéborah François

ノルマンディー保険屋さんの秘書として1週間採用

タイプ早打ち大会で世界チャンピオンを目指す

タイプ早打ち大会と、二人の恋愛の行方はいかに!

予告編『タイピスト!』

マドワモゼルのド根性、見せるあげる
(映画『タイピスト!』)

Wikipediaより⇒マドモアゼル (フランス語: Mademoiselle)は、フランス語で未婚(独身)の女性を指す語。英語のMissに当たる。2012年に仏政府公文章では、女性は未婚、既婚を問わずマダム(Madame)に統一。

なるほど。「マドモアゼル⇒マダム」への統一は2012年と、ごく最近の話なんだ。勉強になるなぁ。

2013/08/15

三十三間堂

猛暑の暑さもヤバかったが、三十三間堂もヤバし!感動とはこのことか。

日本に来た外国人が「三十三間堂に絶対に行きたい」というのを聞いて、前から気になっていた三十三間堂へ行ってきた。

本堂の1001体の千手観音像が凄かった。外国人が驚く訳だ。鎌倉時代の仏師は凄い技量だ。現代まで破壊されずに残っているのも奇跡に近い。なんせ菩薩像は金箔なので、治安が乱れたら、盗難の危険は多いにあったはずだ。建物が耐震構造というのも凄い。凄いモンずくしだった。

- 公式サイト「蓮華王院 三十三間堂
- Wikipedia「三十三間堂

京阪七条駅から徒歩7分。三十三間堂に到着。

入り口。入場料は大人一人600円

本堂の中は撮影禁止。千手観音像を撮影する気満々だったが残念。

こんな感じで1001体の千手観音像がずらり。700~800年前(鎌倉時代)の作品に度肝を抜かれる。昔の人って凄いな。撮影禁止なので、目の中に焼き付けた。大地震で千手観音像が倒壊したら、二度と修復不可能な気がする。また、京都が空襲されていたら、この千手観音像も消滅していただろう。

三十三間堂で千手観音像とともに有名なのがこの「通し矢」

江戸時代の通し矢の風景

南からみた三十三間堂

iPhone5の「パノラマ」で撮影した三十三間堂。正面の柱間が33あるところから「三十三間堂」と呼ばれてる。

北から見た三十三間堂

遊歩道があり、三十三間堂のまわりを一周歩ける

太閤塀の説明板

秀吉が築いたという「太閤塀」

鐘楼と柳

本堂の正面

「夜泣泉」の説明板

「夜泣き封じ」の夜泣泉

後白河天皇の御所に三十三間堂は作られた。

後白河上皇院政庁「法住寺殿」の説明板

遊歩道

池泉

池泉と本堂

蓮(はす)

三十三間堂の朱印帳(1000円)
The red stamp book

観音経本(1巻1000円)
The sacred book

三十三間堂で感動した後、近くにある「京都国立博物館」へ。改装の工事中ということで、入らなかった。工事が終了したら、こよう。

京都国立博物館の正面入口

片山東熊博士の設計した煉瓦塀(明治28年、1895年)
The brick wall

煉瓦塀(れんがべい)の説明板

三十三間堂の近くにある「方広寺」へ。豊臣秀吉が東大寺の大仏よりも大きい大仏を作ったり(地震で消滅)、秀頼が作った大鐘に徳川家康がクレームをつけ、大阪冬の陣、大阪夏の陣で豊臣家が滅亡してしまったり(方広寺鐘銘事件)と、エピソードを多く持つ寺。大仏はもはやないが、「銅大鐘」が残っているとこが凄い。家康を激怒させたという「国家安康」「君臣豊楽」の文字も見ることができる。

国家安康の梵鐘(重要文化財)。大きさは高さ4.2m、外形2.8m、厚さ0.27m、重さは82.7トン

「国家安康」「君臣豊楽」の文字が見える

「国家安康」「君臣豊楽」の部分の拡大

方広寺大仏殿遺物(9点)の説明板

国家安康の鐘は凄く分厚い。歴史の重みに触れる。

鐘楼の天井画

度重なる火事で消滅した大仏殿のあった場所に、明治になって豊国神社が再建された。

豊国神社

豊臣家の家紋、五七桐(ごしちのきり)

水紋

帰りは、方広寺から五条大橋を通って、四条河原町まで歩く。真夏の炎天下だったが、高瀬川沿いの散歩は、そよ風もあり、割かし涼しげだった。

京名物「若あゆ」。京都の色々な所で売っている。冷やして食べると絶品の美味しさ。

夕刻の五条大橋から北を望む。

五条大橋。弁慶と牛若丸が出会った場所。

京の夏の風物詩といえば「鴨川の川床」。2007年に「鴨川納涼床」が地域ブランドとして商標登録されている。

緑が生い茂る高瀬川

四条河原町に到着。高島屋の一角にあるこの三軒の老舗も色々と秘話がありそうだな。