2015/02/17

関西ペイント

「自前主義」から脱せよ!

カンブリア宮殿の今回のゲストは、関西ペイントの石野博社長。「トップが変わると会社はここまで変わるのか」よいうお手本のようなストーリー。石野博社長の言葉一つひとつがとても熱い。やけどしそうだ。「経営のプロ」とはこういうトップのことを指すのだろう。社長自らが「グローバル展開」の先頭にたち、アイデアをぶちまける。そりゃ、社員のモチベーションは上がるな。

「オリジナルな技術力」が高く、「世界一」や「オンリーワン」な日本メーカーは、まだまだたくさんあるはずなので、問題あるのは、その会社の潜在能力を生かし切れていない「プロの経営者不足」の点だろう。社内で育成できていないのなら、外部から来てもらう選択肢が、その会社の利益になるはず。技術だけでなく、経営者も、今回のキーワード「脱・自前主義」につながる。

今回のカンブリア宮殿(関西ペイント)も、「グローバル展開へのヒント満載」で面白かった。前社長の「(石野博社長は)常に情報をとって、常に動いて、常に考えている」という言葉が一番印象に残った。

石野博社長(関西ペイント)

【語録】

・創業1918年。世界拠点36ヵ所。社員約1万2000人のグローバル企業。塗料業界No.1企業。

・やはり「スピード」。アクションを早くしないと、他社と同じレベル。そうすると、「差別化」できない。

・細かい視点で、細かい所まで入り込んで、助言してくれる社長はいなかった。

・危機感。自動車用塗料が占める割合が5割近く。少なくとも1本足ではなく、2本足。こういう形にならないと生き残れない。「新しい切り込み方」や「差別化できるやり方」を考えなくてはいけない。⇒新たな柱となる塗料。

・漆喰塗料。漆喰、消石灰けら作られる粘土質の建築素材。湿度調整の機能があり、モノを保管する蔵などの壁材に昔から使われてきた。温度調節効果。しかし、材料費が高く、左官技術が必要。

・関ペはそこに目をつけ、液体状の漆喰塗料を開発。自分で塗ろうと思えば、ローラーやハケで塗れる。これを塗料化しているのは、うちしかない。漆喰塗料かわ菌やウイルスを吸着、増殖を抑える効果がある。


・目線を変えてチャレンジしていく。普通のやり方ではできない。発想を変えればいい。「どうやればできるか」絶対に道はある。ヒントは色々なところにある。

・常に情報を取って、常に動いて、常に考えている。今後の関西ペイントの海外部門を背負っていくのは、石野が一番適任だと。(前社長)⇒海外市場の開拓を期待。

・「伸びるマーケット」に対して、各グローバル企業が投資を集中している。ある意味「陣取り合戦」。こういうのは、先に行って陣を取っておかないと、後からでは難しい。後5年くらいで世界の寡占化(かせんか)は終わる。

・石野の海外戦略「脱・自前主義」。ビンラディングループ。サウジアラビアの公共事業のシェア7割。信頼のおけるパートナー。色々なプロジェクトを取る。彼らの力が役に立つと思っている。

・「脱自前主義1. 主導権を持たず現地企業の力を借りる」

・南アフリカ。未開拓市場。市場として潜在能力が高い。競争相手がいない間に旗を立ててブランドを樹立する。

・「脱自前主義2. 現地日本人ゼロ」。なぜ日本人を置かないのか。必然性がない。日本人が行くと、その国のことがわからないから押し付けになるし、学ぶのに時間がかかる。我々にそんな時間はない。

・関西ペイントのやり方(関西ペイントウェイ)を分かってくれる人であれば、その国・地域の人がベスト。共有しているもの、それは「信頼」。「信頼」があれば、日本人ではなくて、その国の人が一番いい。

・「日本のやり方」で全部やっていくと、向こうはつまらない。「利益も吸い上げられる」という感覚を持つ。「相手の良さ」を尊重して走ってもらう。「利益をちゃんと折半する」と言うと、これが一番受け入れられる。

・日本企業は「自前主義」にこだわり過ぎる。(村上龍)

・別に自前でも、脱自前でも何でもいい。スピードを持って効率良く利益を上げながら「信頼」を崩さない。こうやっている結果が「脱・自前主義」で、「脱・自前主義ありき」ではない。

・お客さんが求めているものは本当は何なのか?できるだけ本社が決めるのではなく、そこの場所、現場に近い人達が決められる仕組みを作っていく。こういう企業になりたい。

・単に日本のやり方と違って、各国はやり方が違う。じゃあ、これを学ぼうと。みんなでレベルアップをしようと今やっている。販売でも、生産でも、商品でも。「ベストプラクティス(最善の方法)」、いいものを見て、受け入れて、エゴを捨てようと。「俺がベストだ」と思うと、エゴが強くて、なかなか受け入れられない。目的で最短のとこに行くためには、エゴを捨てた方が早い。それでやりましょう、というのが、みんなの中で浸透しつつある。

・「独りよがりを捨てる」ことが、目的達成の近道。

・「利益、投資、リスク」これは全部シェアできるように。各国に「何かあったら全部あげてこい」と言っている。でも、「やり方は任せる」と。

・そういう意味では、「日本はまだまだ周回遅れだ」と思っている。まだまだやらなくてはいけない事がたくさんある。「やれやれ」と。「新しいやり方でやれ」と。組み方も、買収ではなくて、提携や部分的など、色々なやり方がある。「どんどん革新しろ」と。

・石野さんの素晴らしいところは、私達に自由にやらせてくれる。決して何かを押し付けるのではなく、いつも「君達が重要だと思うことをやってみろ」と言ってくれる。

・「脱自前主義3. 仕事のやり方は現地に一任」。

・日本の生産レベルが抜きん出て高いというのは幻想。

・グローバル会議。みんながシェアできる雰囲気や場をつくる。みんなのレベルが上がる。しかも素早く上がる。

(石野博/関西ペイント社長/カンブリア宮殿)

グローバル会議 ⇒ アイデア、情報の共有

2015/02/16

原発ホワイトアウト

原発はまた必ず爆発する。

若杉冽『原発ホワイトアウト』を読んだ。原発再稼働をめぐる現役官僚告発的小説。日本を牛耳る「電力モンスターシステム」。満足度★★★★★。

「原発再稼働」をキーワードに、「電力業界と政治」の世界の仕組みや、官僚の世界、マスコミがどのように動いているか、支配しているかがよくわかる小説だった。とても面白い。現実の日本社会の勉強になる。世の中の動きを正確に知ろうとしたら、表だった「きれい事」を学ぶだけではなく、なかなか表には出てこないが実際日本社会を支配している「裏社会システム」も知る必要がある。

「反原発の人達をいかに潰していくか」の方法がリアル感たっぷりでまた恐ろしい。実際行われている手法なのだろう。「電力モンスターシステムに組み込まれた人達」が収入を得て生活のためとはいえ、「誠実さ」がまったくない世界だな。

これまでは、このモンスターシステムで動いてきた日本だが、今後も維持できるとは限らない。はやり東日本大震災が「転換期」として大きなきっかけになっている。次の大きな分岐点は、この小説中にも登場した「2016年、電力完全自由化」。

日本が良い方向に向かえばいいが、最悪のシナリオは、この小説がシュミレーションするような「原発再稼働⇒再び原発爆発(メルトダウン)」で、原発立地周辺だけでなく広範囲で日本の土地で住めなくなり、日本社会は崩壊する、かもしれない。他の問題はなんとかなるかもしれないが、「放射能汚染」だけは、その土地に半永久的に住めなくなるので、どうしようもない。フクシマ原発事故を経験してもなお「そのリスク」を許容できるのかどうか。

また「小説」という形だから、多くの人に届きやすい。「人間はストーリーが好き」だから、頭にも入り易く、残りやすい。

次ぎは著者の第二弾『東京ブラックアウト』を読もう。


【語録】

・10電力会社による地域独占、原発の推進、それによってもたらされる政界と財界た官界の結びつき。

・これからの課題。「再稼働」「電力システム改革の阻止(発送電一貫体制、原発の堅持)」「世論対策(料金値上げの容認)」。

・電力システム改革のゲームには、電力会社や政治家が参戦する。しかし、制度の細部の決定権を最後の最後まで放さないことが官僚パワーの源泉なのだ。

・日本の社会は「仕切られた多元主義」だ。人材の流動性が低い中、それぞれの組織が独自の利益を極大化しようと志向すれば、全体としては最適な結果をもたらさない。人口ボーナスで逃げ切れる団塊の世代は、それでいいのかもしれないが、人口減少の時代にあって、これから生きて行く若い世代は違う。

・日本の社会は「組織の中で個人が飼い殺しにされる構図」である。多くの組織の中堅どころは、それに気がついている。

・電力会社が総括原価方式によってもたらされる超過利潤(レント)によって、政治家を献金やパーティー券で買収し、安全性に懐疑のある原発が稼働し、再び事故が起こるということは、何としてま避けなければならない。

・電気料金という名の会社の売り上げは、天から降ってける。景気動向には、それほど左右されない。努力しなくても、売り上げの結果は変わらない。創意工夫の余地もない。必然的に、支店の社員は、仕事の中身ではなく、仕事以外の事柄、趣味に打ち込むのであった。

・「政党交付金」が表の法律上のシステムとすれば、「総括原価方式の下で生み出される電力料金のレント、すなわち超過利潤」は、裏の集金・献金システムとして、日本の政治に組み込まれることになった。このモンスターシステムは、日本の政治に必須の動脈となった。近年の構造改革路線で、ゼネコンや医師会の利権が痛めつけられていることからすると、もはや日本では最大最強の利権になっている。

・ルールというのは、いくらでも穴があるものなのだ。

・「原発を再稼働させないと電気料金はどんどん上がる」という構図を示し、大衆に理解させれば、徐々にアンチ原子力の熱は冷めていく。「原発事故もいやだけど、月々の電気料金の支払いアップも困りますよね」とワイドショーのコメンテーターが呟(つぶや)けばよいのである。大衆は、ワイドショーのコメンテーターの意見が、翌日には自分の意見になる。

・原発事故直後は、「停電か、再稼働か」という二者択一を迫ったが、図らずも国民の節電意識が浸透し、原発が動かなくても電気が足りることが立証されてしまった。この手がつかえないとなると、次は「値上げ」で大衆を脅すしかない。

・大衆は常に「自分よりうまくやる奴」を妬み憎む。「公務員でもないのに競争がないなんて許せない」「競争がないなら電力会社の経営は合理化されていないはずだ」「電力会社同士で競争させれば料金は下がるはずだ」と大衆は思っているのだから、電力業界で競争原理の導入を謳った「電力システム改革」の実施を政府で決めて、これからは競争が起きると大衆に信じさせればよい。

・原発を動かすと、10万年もの間、放射線を出し続ける核のゴミが出てくる。フクシマのように事故のリスクもある。費用も安くない。これじゃ、原子力は否が応にも進まない。進めるメリットがないから。だからこそ、絶対に「もんじゅ」は動かさなくてはいけない。原子力政策の正当性を維持し、原子力ムラの飯の種を維持するためには、「もんじゅが動く」と言い続けないと、原子力の神話が崩壊する。

 ・周辺住民の日常生活を一瞬にして破壊してしまう原発事故のリスク。

(若杉冽『原発ホワイトアウト』)


【追記】

橋本勝さんの『脱原発憲法』と『反原発』の風刺マンガ。「原発再稼働」と「電力モンスターシステム」の『原発ホワイトアウト』を読んだ直後だけに、この風刺漫画のメッセージ性を強く感じる。


(橋本勝さんの『脱原発憲法』)


2015/02/15

雅叙苑

「観光」とは何か?「地域の素材」を観光資源に変えろ!「田舎の日常」こそが観光資源だ。

カンブリア宮殿の今回のゲストは、雅叙苑観光の田島健夫社長。鹿児島の霧島で、究極の絶景温泉宿「天空の森」と、古民家を移築し「忘れの里雅叙苑」を経営。「自然と地域性」にこだわった高級旅館。観光業の常識を打ち破る独自戦略、奇跡のオンリーワン。

これからの観光業界だけでなく、日本のサービス業がが目指すべき「アイデア」がたくさん詰まった内容で、とても面白かった。霧島の大自然の中で、「感動」や「驚き」が沢山詰まっている温泉宿。もう一度観たい。そして、死ぬまでこの究極の宿を体験してみたい。自分も「エネルギー」関係のメーカーの仕事だけでなく、雅叙苑のような「地域のオリジナル」にこだわった、「食・宿・観光」のビジネスにも関わってみたくなった。

今、脚光をあびている経営者は、20年も30年も前から、試行錯誤しながら、独自戦略をすすめている。短期にできる「コピー商品、コピーサービス」と違い、「オリジナル」は中長期の時間軸が必要と、カンブリア宮殿に登場する経営の皆さんのストーリーを色々と聞いて思った。インスタントなコピー商品に対して、「オリジナル」はマッサンのウイスキーみたいな「熟成」だな。



【語録】

・日本の場合は、観光産業はコピー産業。観光はオリジナルなはずなのに。何かいいものがあると、それを持ってきて真似する。

・風景や食材や土地の文化、地域にある素材を磨きあげ、他にない「オンリーワン」を作り上げる。それが田島流。

・「お客さんによって、求めるサービスは違う」と気づいた。都会の人が求めるのは「ふるさとの風景」。観光は「娯楽」ではない。観光は「地域文化産業」だ。


・「街の匂い」や「食べ物の味」という、器官を通じて観ることが「観光」ということではないか。そういう意味では「ショーウィンドウ」。私達は、日本の、あるいは鹿児島のショーウィンドウにならなければならない。

・これが「観光」。実に簡単な話だけど、大学や専門学校で配膳の仕方とかを教えても、「観光」と「地域」の関わりや、「観光の定義」の教育ができていない。

・ただ、絶対素晴らしい観光が日本には芽生えていくと思う。「素材」はあるが、その「素材」を「資源」にしていく脚本が書けないだけ。僕は当たり前の事を当たり前にやっているだけ。

・「ルレ・エ・シャトー」(地域の魅力を独自の個性で伝える一流ホテル・レストランの会員組織)。世界的権威。世界に唯一無二とい意味。世界に誇れるという証明。日本の会員は15施設のみ。そのメンバーとして雅叙苑(がじょえん)が選ばれた。

(田島健夫社長/雅叙苑観光/カンブリア宮殿)



忘れの里雅叙苑

【ルレ・エ・シャトーとは】

1954年にフランスで誕生した「ルレ・エ・シャトー」は、世界的権威を誇るホテルとレストランの会員組織。ルレ・エ・シャトーは創業当時より、「5C」で表される基準による厳格な審査をクリアしたホテルとレストランのみに加盟を認めてきた。選択基準となる5Cとは、「Courtesy (心のこもったおもてなし)、Charm (洗練された魅力あるスペース)、Character (特色や個性あるスタイル)、Calm (落ち着きやリラックスできる場所)、Cuisine (質の高い料理)」で、この5つの要素がすべて満たされていなければならず、「すべてにおいて本物である」ことが求められる。