元銀行員である著者の池井戸潤氏の「銀行観」が、登場人物達の口を通して随所に現れる。銀行だけでなく、「組織の問題」としても「世の中、こういうものだ」と勉強になる。大組織の出世競争は、てーへんだ!
【語録】
元銀行員の経歴を生かして独立するのなら、本や雑誌に寄稿し掲載されるほど「書ける」か、何度かはある講演の機会を逃がさずリピーターが来るほど「話せる」かどちらか、あるいは両方のスキルがなければならない。俄かコンサルタントは看板倒れに終わるのがオチ。
銀行に長くいたといっても「専門的なスキル」がある者は少ない。しかも「元銀行員の看板、一流大学の経歴」は再就職先にとっても「使いにくい」と映る。元銀行員にもプライドがある。この「需要と供給のギャップ」が埋まらない限り、再就職は難しい。
大物の支店長ほど、行員をよく気遣い、守る。だから「人望」も厚い。
銀行員である前に「人」であれ。
銀行という所は「人事」がすべてだ。「ある場所でどれだけ評価されたか」、その評価を測る物差しは「人事」である。だが、その人事が常に公平だとは限らない。「出世をする者が、必ずしも仕事のできる人間ではない」ことは周知の事実。
古色蒼然とした官僚体質。見かけをとりつくろうばかりで、根本的な改革はまったくと言っていいほど進まぬ「事なかれ主義」。蔓延する保守的な体質に、箸の上げ下げにまでこだわる幼稚園さながらの管理体制。なんら特色ある経営方針を打ち出せぬ無能な役員達。「貸し渋りだ」なんだと言われつつも、世の中に納得できる説明一つしようとしない傲慢な体質。
「もうどうしようもないな」と思う。だからオレが変えてやる。そう半沢は思った。手段はどうであれ、出世しなければ、これほどつまらない組織もない。それが銀行だ。
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』)
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