2014/09/20

銀翼のイカロス

池戸潤『銀翼のイカロス』を読んだ。半沢直樹シリーズ最新巻。航空会社の再建問題。債権放棄と政治スキャンダル。超一流のバンカー達の仕事ぶりに、最後しびれた!満足度★★★★★。



【語録】

どうするもこうするも、「自分が正しいと思うことをする」しかないだろう。

渡る世間は鬼ばかり。

正論がいつの間にやら端に追いやられ、詭弁がそれにすり替わる。考え過ぎた挙げ句、時としてバカでもやらないような事をするのが組織というやつだ。

腐った連中が、今やお偉いさんになって、この組織でのさばっているとあっちゃあ、どうにも気分が悪いってもんだろう。世の中、正義はないのかって話だ。

隠し通せばいいってもんでもない。隠蔽は隠蔽を生む。隠蔽はあくまでも結果であって、原因は組織の体質にある。銀行の信用ってのは、それを乗り越えた所になくちゃダメなんだ。  

徹底的にやらせてもらう。警察にあって銀行にないものが一つある。それは、時効。すでに回収されていようと、銀行員には時効はない。きっちりけじめをつけるのが、バンカーの掟だ。

どこかに突破口があるはずだ。

銀行において、「情報の優劣」が物事の勝敗を決する場面は少なくない。

たとえ相手が政治家だろうと、関係ない。この際、きっちり片をつけてやる。やられたら、倍返しだ!

身の丈に合わない欲を掻くから、面倒なことになる。人もそうだし、実は会社だってそうだと思う。「できもしないことをやろう」とするから無理がある。結局、そんな会社は誰も幸せにしない。社業もうまくいかないし、社員だってストレスで参ってしまう。全ての会社には、その会社に合った「身の丈の欲」ってのがあるんですよ。

水は高い所から低い所へしか流れない。つまり「自然な流れ」ってのがある。因果応報が世の中の理だ。であれば、それに従うのが一番楽だ。欲を捨てれば「真実」が見えてくる。悪いものは悪い。いいものはいい。要は、それだけのことなのだ。

物事の是非は、決断したときに決まるものではない。評価が定まるのは、常に後になってからだ。もしかしたら、間違っているかもしれない。だからこそ、「今自分が正しいと信じる選択」をしなければならない。決して後悔しないために。

(池井戸潤『銀翼のイカロス』)

2014/09/07

自然エネルギー革命をはじめよう

高橋真樹『自然エネルギー革命をはじめよう、地域でつくるみんなの電力』を読んだ。日本で起こっているボトムアップの「エネルギーシフト」の解説。色々な地域ネットワークの活動やエネルギーの作り方を知ることができる。満足度★★★★★。

「企業目線」ではなく「市民目線」で、エネルギーシフトの取り組みを考えると、これこら日本で起こるであろう「電力自由化」で、市民各人の果たす役割は色々あるのではないかと思った。

この本の言わんとすることは以下の箇所に集約。

【語録】

・むしろ「小さい方」がいい。それぞれが自分にできる小さな取り組みを見つけて、具体的に進めていくことが大切。その第一歩は、僕達が「与えられたエネルギーを消費することしかできないか、か弱い存在」なのではなく、「自分達自身の手でエネルギーを創り、社会を変えていくことができるのだ」と自覚することから始まる。小規模分散型の社会を実現できる自然エネルギーは、その変化を生み出す最適ツールと言える。(P218)



2014/09/06

辻調理師専門学校

徹底的な「本物主義」。次の料理界を担う「人材」をどう育てるか。

カンブリア宮殿の今回のゲストは、「辻調グループ」代表の辻芳樹さん。辻調、つまりあの有名な「辻調理師専門学校」。「世界三大料理学校」と称される日本最大の「食の教育機関」、卒業生13万人。創業は、辻芳樹さんの父(辻静雄さん)が読売新聞の記者をやめて設立。個人としても「奥深いフランス料理の研究」で、フランス料理の歴史に名声を残す。

料理の専門学校なので「テクニック重視」かと思いきや、徹底的な基礎力を身につけた上で「考える力」「学ぶ力」を身に付けることを重視。「覚えた料理の数」ではなく、「どういう思考過程でこの料理が作られているか」を理解できれば、レシピはそこから派生して数多く作れると。とても「生徒思い」の経営者の考えだ。社会に出た後、生徒が料理人として、自立していけるようにと、教育に様々な工夫(実際の店舗で実習、フランスに学校を設立、本物の食材を使用など)をこらす。「人材育成」にかける情熱の理念が素晴らしい。

料理の世界だけでなく、「技術者」を育てる大学(工学部など)も本来このスタイルであるべきだろう。知識を詰め込むだけでなく、「基礎力+創造力、学ぶ力」。社会に出ると、大学で学んだ当時の最新知識はすぐに陳腐化するので、「新しい事を学ぶ力(吸収力)」が重要になる。

辻芳樹さんや辻調グループの「料理人を育てる」という熱い理念がひしひしと伝わってきた。卒業生(萩シェフ)で「1日に1組だけもてなすスタイル。野菜を提供する農家にもブランドがつく」という話のところはとても感動的だった。これぞ「創造力⇒オリジナリティ」。見習いたい。

■1日1組のフランス料理店「Hagi」


【語録】

・「ただ単に言われた事をやって、それがどういう料理につながっていくかを全く考えないで、やみくもに苦労する」というのが悪いパターンの組織だと思う。いかに一人一人が「労働力」ではなくて、「考える戦力」として、調理場で働いていられるか。そういう人材を我々は作っていきたい。

・料理を理解するというのは「味覚で分かる」「頭で理解する」「技能で再現できる」。この3つがないと、料理は絶対にできない。

・「どうやったら自主的に彼らが能動的に勉強するようになるか」「最終的には、彼らが就職した時点で、自分がどういうキャリアで、どういう料理を臨みたいのか」「どういう料理を探し当てて、その道に自分の人生を捧げたいと思える」まで、この3つを在学中に、何とかして与えたい。

・「言われてやる仕事」というのは、「仕事」ではない。

・「料理」というのは、とことんまで「芸術」に近い世界でありながらも、「芸術」になってはいけないものである。それぐらい、高貴な深みを持った職業に携わる人達に、凄く敬意を表したい。その人達を我々は育てているという気持ちを私だけでなく、全職員が持っている。

(辻芳樹/辻調グループ代表/カンブリア宮殿)